ある木造2階建て新築一戸建て現場にて巡り合ったおじさんは、一目見て喧嘩好きとわかった。他の職人や我が家族、そして工務店のオヤジまでそれまで全く気がつかなかったのであるが、小生にはすぐわかる。なんとなく雰囲気が違う。いやその方は、血気盛んな若者ではなく、して、不渡り手形くらって腹が立っているような怒り方でもなく、そして決して気が立っているわけではない。従業員数十人を使用する立派な水道工事業の社長さんだ。それでも見分けることができるものだ。
喧嘩話がすっかり盛り上がってしまい、その社長さんはいきなり腕を捲り上げ、左ひじに深い切り傷があること、左の太もも、左の膝とその少し下側の部分にも手術の痕があることをズボンをおろして見せてくれた。おそらくバックり皮膚が裂け大量出血したであろうその傷口の幅は相当に広く、アイクチの凄さを想像させるものであり、全て左側というところが実に感動的である。対戦相手はみんな右利きの人ばっかりだったんだね。(^o^)
他にも随分沢山の話を聞いたけど、そのうちの少しを紹介しましょう。
昔、行き付けの小料理屋さんへいつものように風呂あがりに立ち寄ると、女将が何やら慌てふためいている。まだ夕暮れ時だというのに、昼間っから飲み続けているそうで、しかも今になって「金は持ってない」「文句があるなら警察でもなんでも呼んで来い！」と、２階の和室で暴れまくっているのだという。腕に自信があるその社長は洗面器とタオルを1階のカウンターに置くと「ちょっと様子を見て来る」と言残し、心配する他のお客やオカミサンらの制止を気にすることもなく階段をトントンと上がって行った.。
上がり口に居た酔漢と目が合うや否や社長のそのヒゲをはやした風貌に怖れをなしたか知らないが、酔漢の客はいきなり殴りかかって来た。座布団やらテーブルをひっくり返しながら戦闘すること約十秒、酔漢は逃げ出そうとした時に足を滑らせて1階のカウンター付近まで転げ落ちてしまった。2階で殴られたうえ、1階の階段まで泥酔状態で転げ落ちたのだからもう全身血だらけの真っ赤っか。畳も階段も血染め模様状態。1階に居た客は全員店外へ脱出。更に道路に引きずり出して殴る蹴るの暴行。これではもうどっちが悪いのかわからない状況。ボコボコにしたところで誰が電話したかパトカーのサイレンの音が聞こえた。社長は焦った。(･･;)
このままじゃいかん、相手は血だらけ、こっちは無傷、どうせ警察官に対し、「先に殴ってきたのは相手の方です」と言って見た所で無駄。
喧嘩闘争の被害者は被害が大きい方と決めつけられるに決まっている。社長は今まで度々パクラレて、警察署や拘置所で随分勉強してきたからなあ、ムショ仲間の連中と刑法ゼミしながら。公判が始まる前に牢獄の中で既に罪名と刑期が決まってしまうぐらいの情報通ばっかりだったからなあ。前科者の獄中裁判は正に至当。起訴状朗読の台詞まで覚えているやつもいた。刑事裁判制度なんかいらないよう。 というシーンを思い出した。
しっかし、あのときのメシはもう食いたくないよう。・・・シミジミ泣き(>_<)
そこでとっさに社長は自分で電信柱を殴って左小指を骨折させた。
やがて警察官が到着、二人はしょっ引かれ、ママも参考人としてパトカーへ乗りこむ羽目に。
酔客は全身血だらけで、どう見ても負けているのだが、社長は骨折だから全治３週間。酔客はただの擦過傷だから全治3日。因って加害者は酔客と決定されました。もちろん社長は無罪でした。めでたしめでたし。(^o^)
おしまい
追伸 この程度のパフォーマンスでぱくられなきゃ又喧嘩が出来る、という変な自信を捨て去るのに更に数年かかったそうです。 こりねーなー(ｰｰ;)