できちゃった未婚詐欺
一般的には↓
結婚する意思がないにも関わらず、結婚を餌にして異性に近づき、相手を騙して金品を巻き上げたり、返済の意志もないのに金品を借りたりして、異性の心身を弄ぶ行為。
代表的な手口として、「結婚前に清算しなければならない借金がある」、「結婚を機に独立するつもりなので開業資金が必要だ」、「株や先物取引で失敗して金が必要」などと偽り、多額の金品を騙し取る。また、これと同様にカードを相手に貸してしまい、多額の借金を背負ってしまう被害や金を渡した相手と連絡が取れなくなり、後で被害を受けたと発覚するケースがある。男性よりも強い結婚願望をもつ女性が被害者になることが多い。日本や韓国の男性がアジア諸国の女性に国際結婚を持ちかけ、ビザ支給費用などの名目で金銭を騙し取ったり、結婚を約束したアジア人男性からバッグを運ぶよう指示され、税関でバッグの底から麻薬が発見され不法密輸による逮捕事件が発生しており、国際結婚詐欺を仲介するブローカーも存在しているという。
刑法並びに民法上には「結婚詐欺」としての明確な規定は無いが、一般的な詐欺に該当するか否かが争点であり、他人を欺罔（ぎもう:人をあざむき、だますこと）して錯誤に陥れたのか否かが重要である。つまり、結婚の約束をしていたが、何らかの理由で結婚をしなかったというのは、当初は結婚する意図があったことから欺罔行為が存在せず、詐欺にはならない。また、いわゆるデートの際におごったというのは双方その楽しみを分かち合っているので、この程度では詐欺にはならない。プレゼントも一般にはなかなか詐欺とは言えず、それを相手が執拗に要求し続けた場合など、その頻度、金額などによって総合的に判断される。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーお話ーーーーーーー
懐かしきバブルが終わるころ、西武池袋線すずめが丘駅からバスで１０分ほどの土地に地元の名家があり、そこの一人息子たる御曹司の田中（仮名）さんは何一つ不自由なく母親と暮らしていた。市役所の課税徴収係りに勤務しているが、ぐずぐずした性格と元々の低能、加えて人の良さのせいでうだつが上がらずはや４５歳。資産家の父親から相続した土地を切り売りしては毎週三日ぐらいは池袋で飲んだくれていて、夜中、終電も発車する頃、独りになった客として満悦かつほのかな期待を抱きつつ二次会三次会も残ったホステスや狙いのママさんを連れて夜食をおごり、タクシーで次々と送り届けるほどの気前の良さであった。ぐるっと回って２万円もかかるのに。
店に入ると待ちかまえていたホステスギャルが「あっ、チュンチュンだー§^。^§」と満面の笑みで迎えてくれて取り囲まれるのがなんだか、嬉しい。それもそのはず夕食もそこそこにまだ客が居ない７時頃から詰めかけるんだから、暇なホステスの餌食となって今夜もボトルを二本入れてしまった。
田中だから中の字をとって上海に掛ければ確かにチュンだが、浮ついた心には気持ち良い女性の声としか捉えられない。
ホステスの前では「俺は今は市役所勤務のサラリーマンだけど、実は裏稼業があって、上海では少し有名な事業家なんだよ、環境関連事業に既に数億円投資している。もう少しで軌道に乗るが当面は資金手当てが必要なので土地を売って運転資金にしているが、回収も間近い。そしたらもっといいところに遊びに行こうよ。(^o^)」と吹いていた。
ところがどっこいホステスの勘は鋭い。
「顔がボケてる、しゃべりが遅い、教養が無い、非常識な部分がある、事業って言ったってまだまだ先かも、あんな言い回しで口説いたって駄目よ。」
と、個人的にデートに誘われてもそそくさと理由をつけて逃げて行ってしまう。うら若きアルバイトホステスは警戒心が強くて雀をつかまえるようになかなか捕まえられないのだ。
女性にもてないやつは仕事が出来ない、おれは実業家だ、今に見ていろ、必ずゲットしてみせる、と密かに狙っていた。
そもそも田中御曹司は多少婚期が遅れているのではないか、それは地味な生活を続けてきたからだ、事業家になってモテたい、と次第に考えるようになっていたのだが、一般的に父親が倹約家だと息子はこーなるという典型。
しかし、そこまで馬鹿ではない。
そのうち土地だけ売ったのでは税金が高いことに気がつく。役所の課税係りなのに全然勉強していないので、次の土地を狙ってきた設計事務所の社長に入れ知恵されたのにグッドアイデアだと思い込んだらしい。
一晩考えると言い残したが実は嬉しくなってまた池袋のスナックへ行って遊んでしまったらしい。そして翌朝社長に新方式における売却を受諾した。
密かに
「よし、今度は自ら建築主になって建て売り事業をやろう、上海が軌道に乗る前に一旗あげよう」と考えるようになった。
打ち合わせや監督で忙しくなるから嫌だった市役所勤めを辞めた。
設計事務所が企画を持ち込み、隣地所有者と境界を確定し、測量、分筆を土地家屋調査士に依頼して、建物を建て、自分の土地を売る。母親と共有なのでそのたびに判子をもらうのだが、母親は次々と夫が残してくれた土地が無くなっていくのを危惧していた。
８棟現場をいつもの通り建築事務所併営の宅建業者名義で販売を開始する。１棟売れる度にすずめ信金で決済して一部返済する。２棟目、３棟目と続くがどうゆうわけか最後の一棟が売れ残る。全て売却しないと次の融資が受けられないからすずめが丘ハウジングの社員の名前を借りて登記し、完売したことにする。
安く流すので最後の棟で得られるはずの利益は消える。
次は慎重になって、少し小ぶりの５棟現場だ。最初はチビッテ４棟にしようと言ったら、設計事務所の社長や販売担当業者が「それは縁起が悪い、奇数にして下さいよ」というので多目に売りだすことにしたのだが、所詮この程度の決断力じゃどーにもならない深みに溺れる事になる。正にホステスにも見抜かれているのにまだ当人は気がつかない。
考えてから実行した。
ところが順調に販売出来ているのだが、どーゆーわけか半年経って最後の棟の決済になるとやっぱり売れない。なんでかなー？？
で、また、社員の名義を借用して完売したことにして、掛る登記料、取得税、ローン印紙や利息まで負担することになり、資金繰りに行き詰まった。
前年の土地売却譲渡税が襲い掛かり資金計画は狂う。
苦しくなって池袋のスナックのママに相談したら同じお客さんでいい人がいるわよ、と紹介してくれたのが井中不動産の井中社長。
こちらもやっぱりホステスにチュンチュンとか言われるほどの気前良さだが仕事になると正に鬼。きっちりやる。
で、提携を持ちかけた御曹司田中に対しては「設計事務所の社長の領域に立ちいる訳にはいかないからうちは貴方の土地は買わない、運転資金に困っているなら融資だけしてあげましょう、もうすぐ売れるんでしょ、この現場なら、キッチンも新型だし、ベージュの色もなかなか無い色を出しているからセンスもいいですね」とほめちぎり、短期融資だから毎月４歩だ、として交渉をまとめた。
そしたら翌月完売したので、すっかり気を良くした御曹司のチュンチュンは今度は借入手続きが面倒だと思っていた信金を使わず、不足分を井中チュンチュンから借りて取り組む事にした。
案の定、６棟現場が完成になる頃、資金繰りがショート。
助けを求めると井中チュンチュン社長が融資を確約すると共に、担保が必要だから、と言ってマゴタ司法書士を連れてやってきた。
スズメが丘駅で待ち合わせてマゴタを乗せると、田中チュンチュンが建売現場まで自分の車で先導する。やたらと飛ばす。
交差点でも赤になる寸前にシルバーのベンツがキキキーッと高らかにタイやを鳴らして右折する。
大きく見せようという心理なのか、明らかにいきがっている。でも信号が赤に変わっているので井中社長の車は右折出来ないから結局その先で待ってもらう事になる。これでは何もならない。
その有様をみてハンドルを握りながら、イナカ社長が言う「ママに聞いたけど、アイツ、ハゲなんですよ、かつらかぶってるけど、そんなことまでホステス連中は知っているのに、あいつはまだ知られていない、俺は女にもてると思い込んで毎月２００万ぐらい飲み代に落としているらしいですよ、隠したってダメなんですよ」。(＠_＠;)
そうか、意気ガルとは隠したい心理の表れか。
マゴタ「持てない３要素はハゲデブチビだけど、ケチがないだけまだもてているんですね」
井中「あはは、面白いこというなぁ、４要素に変えましょう」
こちらの車中雑談をつゆ知らず、の、ハゲチュンは建築現場に到着するとさっそうと車を降りて「さぁ、どうぞ、ご覧下さい。もう少しで完成です。(^o^)」と自信ありげ。
マゴタは表示登記の見積もりと登記申請可能時期をさぐるべく棟梁と工事進行情況の話をして、次回現場調査の日程と書類の準備を指示する。
C棟とD棟の間をすり抜ける暗いインタバルの途中で井中社長が耳打ちする。「融資は今回で最後です、これ以上は深入り禁物、売れ行きがごっそりと落ちているんです、この近辺は。既に設計事務所の社長とも話をしてます。だから思いっきり厳しい担保でお願いします。」
建て売り現場に隣接する彼の実家の応接間で共有者である母親と共に面接し、「今回は抵当権じゃなくて所有権登記します。売り渡し担保という形態です。年内に完売するから取得税も上申書を付ければ問題ないし決済の時は抹消してやり直しますから大丈夫です。」と吹っ掛けた。
ハゲ「えっ？何？それっ！そんなことしちゃ売れないじゃないの？」と言うかと思ったら、逆にこちらの味方になって「ね、お母さん、センセイが大丈夫だってよ、だから実印を押してね、早く」と言うじゃありませんか。
拍子抜けしたのはこっちの方だが、トントン拍子に進んで書類は整った。
議論中、母親は息子に向かって「おまえ、中国のビジネスは大丈夫なのかい？ちっともうまく行ったという話がないじゃないか、もうあの道路まで続いてたうちの土地は次々と家が建って庭が消えてしまい、ついに池の手前まで赤白の「販売中っていう旗」が立っているよ、池の鯉だけは守ってもらうからね。もう住むところもなくなっちゃいそう(;_;)ｳﾙｳﾙ」と力の無い声で抗議していた。
田中チュンハゲが言い訳して、一件落着するまでものの数分しかかからなかったのだが、どうやらこの老婆、独り息子には弱いらしい。
マゴタは帰途、再度井中チュンに相談。「そうは言っても取得税がかかるのはこっちのほうだ。譲渡担保契約書はあるが、当面留保で行こう、販売計画が狂ったらすぐ付けるから」と作戦変更。
それから数カ月経った。
そんなアホだから環境事業も建て売り事業もうまくいくはずもなく、最後の棟は例によって建築事務所の社長の進言（というか作戦というべきか）により、安く投げ売りして完売したらしいが入ったお金を次々と使ってしまうので手残りは既に無く、田中チュンハゲは別の借入の話で井中社長の事務所を訪ねていた。
「実はあのママを妊娠させてしまって：：：」と切り出す。
「母にばらされたくなかったら手切れ金を1000万円ほど用意してくれと言われてます。なんとか支援をお願いします。」
不承不承残った自宅を担保にとって貸してあげた井中社長だが、実は後でママに直接聞いたら設計事務所の社長の間に出来た子供だったんだってさ。死んでも結婚したくないからお金で解決しようと持ちかけられたハゲチュンはそんなことは思って見なかったらしく真相を設計事務所の社長にも相談したが「それはもうお前、払ってやるべきじゃないのか」と説得され、もう結婚してもいいや、と思っていたけどそれも諦めたそうだ。
それで自称モテ男は最後の砦を・・・
あ〜あ、できちゃった未婚、なんという不始末。
モドル