振り込め詐欺 被害者救済法
振り込め詐欺の被害金を返還するルールを定めた新法「振り込め詐欺被害者救済法」が08年６月２１日、施行される。犯罪グループなどを相手に、時間も費用もかかる訴訟を起こさなくても被害金を取り戻せるようになる。預金保険機構や金融機関は、詐欺に利用されたとして入出金を凍結した約１０万件の口座に残っている約５０億円を、今後２年間で被害者に返還することを目指す。新たに発生した被害も返還対象としており、被害者救済が前進しそうだ。
新法では、金融機関は警察や被害者からの通報で犯罪利用の疑いのある口座を凍結した上で、預金保険機構に口座名義人の権利失効を申し立てる。
同機構は名義人や口座番号などをホームページ（ＨＰ）に掲載。
６０日以上たっても名義人から申し出がなければ、名義人は口座の権利を失う。
その後、同機構はＨＰで３０日以上、被害者からの返還請求を受け付け、金融機関は被害額に応じて口座残高を配分する。
預金保険機構は７月１６日からＨＰに犯罪口座を掲載。
現在凍結中の約１０万件の口座は２０１０年３月までにすべて公表する考えだ。
全国銀行協会は、犯罪防止の注意喚起や被害金返還の手続きを説明したちらしを計１８０万枚作成し、約１９０の加盟行に配布。
３メガバンクなど大手行も被害者向け電話相談窓口を開設した。
りそな銀行は不正利用の疑いのある口座をみつけるシステムを導入。みずほ銀行も同様のシステムを年内に稼働させる方針。FujiSankei
Business i. 2008/6/21
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詐欺には民事上と刑事上の概念があり、前者は被害者救済としての提訴が必要だったがそれを立法措置として簡素化した。
後者は逮捕して拘禁し、二度と詐欺をしないよう国家権力が処罰するというもの。
前者たる民法上の要件事実を以下に掲げる。
１・詐欺の故意
２・欺罔行為をした事実
３・前項により表意者（詐欺被害者）が錯誤に陥ったこと
４・当該意思表示（銀行員に対して振り込み意思を示したこと）が前項記載の錯誤状態において行なわれたこと
５．取消の意思表示
例えば、４まで該当しても、金額が小さいから諦めるとか、騙した奴も哀れな人生を送っているのだろうから気の毒だ、などと勝手に自分の判断で泣き寝入りしてしまったのでは騙し取られたお金は戻らないことになる。それだけではなく、犯罪者グループをのさばらせる事になるので次々と他の被害者が出ることを黙認することになる。社会性を帯びた犯罪の真相を解明することは社会人としての義務でもある。
次に、騙した犯人（刑事上の言葉）を特定しなければ取消の意思表示ができないので、その相手方を付帯私訴などで特定する困難性が問題。加えて恥の文化、狼狽している最中の振込み手続きなので、電話内容を曖昧にしか記憶していないことが多いので手口解明が困難。
更に、犯人グループは振込み確認をして、直ぐに預金を引き出すため資産が残っていないことが殆どであるため、提訴しても賠償金が戻らないことが多い。訴えただけ無駄になる。これでは泣き寝入りしかない。だから難しいのである。
よって、効果的な水際作戦としては金融機関職員が窓口に来た方の心理状態を見極め、傷付けないように上手に聞き出したうえ、相手方を再度特定するなどの措置をお勧めする方法が効果的なのだろう。それには規模の小さい預金客の顔や特徴を記憶できるアットホームな信金や信組、農協などが適しているだろう。つまり、窓口で対話しつつ、地域金融機関に自分お心境を診察してもらうのである。多少、差し出がましいことを聞いても許される地域的営業基盤を築いているからだ。
しかし、職員の感覚で防止するという作戦だけではあまりに心もとないし、息子の犯罪や交通事故、横領事件に巻き込まれて直ぐに示談金を払わないと逮捕されるぞ、とか言われて脅かされているため聞き出そうとしても客の心境は舞い上がってしまっているから振り込む動機を話たがらないので最善策とは言い難い。制度的保障が必要だろう。
そこで、口座開設者のマネロンに基く本人確認や休眠口座の整理、定期的なＤＭで預金名義人の存在を確認することや、他行でもよいから一定額以上の預金を積まなければ新規口座開設させない、とか、預金債権に逆連帯保証をつけるなどの、口座そのものに信用性を持たせる施策も効果的ではないのかと思う。
いずれにせよ健全な取引を阻害するものだけに反対論も多いだろうが、これだけ金融犯罪が増加したのでは、今回施行された救済法だけでは振り込め詐欺が減少することは期待できず、この対策法施行も焼け石に水の状態だ。
次に某司法書士が振り込め詐欺事件を解決した話をしよう。
被害に遭って駆け込んだ来た方と銀行、警察を廻り、相談を開始。
救済法がない時代だから逆にこちら側が疑われたりわけのわからない抽象的なプライバシー論を言われたりして往生したけど、刑事さんに訴えてその力でようやく預金名義人の住所を突き止めた。振込金は既に全額出金されており、返還されないことは明らかだが、だからといって黙って泣き寝入りしたくないという被害者の心境を察するにあまり、何か法律家としてしてあげることはないかと思案を巡らした結果、ここまで頑張ったのであった。
預金名義人の家に行ったらインターフォンごしに口座名義人とおぼしき男性が出てきたが、けんもほろろに玄関口で「誰だ、お前は、用はないぞ、帰れ！！お話することは何も無い！！：」と言われた。というより怒鳴られた。
逮捕権限がないし任意同行も求まることは出来ないからひたすら事情を聞きたい、被害者救済に協力して欲しいと頼む以外方法はない。しかし、インターフォンは一方的にガシャッと切られてしまったのでその日は諦めた。
已む無く事務所へ引換えしたが、どうにも収まらない。
あの怒りようは絶対疚しいという自覚があるからだ、と考えた。
そこで後日再び昼間に訪問すると奥さんらしき人がインターフォン越しに応対してくれて、「うちの主人、また、やっちゃったんですか？」と言う。口座を作って依頼人に渡すと１５万円もらえるという新しいアルバイトを見つけたとか言って、数度、その通帳ブローカーに自分名義の通帳を渡したらしいという。でも、「自宅まで来られたのは貴方が初めてですよ、もう二度とやらないように言ってやってくださいよ、」
と、まるで司法書士の情熱が伝わったような雰囲気であった。
そこで旦那さんの帰宅時間を見計らって行くことにした。更に警察の刑事に詐欺共犯として逮捕してくれるよう頼んだが、刑事は「それだけじゃ動けん、現行犯じゃないし。立件すると検察庁の担当と打ち合わせ記録を作らなければならないのだから、あっちの都合もあるしね〜相談してみなきゃならん」と心もとない返事。
仕方ないから、次の日の夜八時過ぎ、旦那が帰宅するまで門の前で一人で待ち伏せしていた。インターフォンじゃだめだ。面談しなきゃ、と思った。
晩秋なので外は結構寒い。
タバコを半箱ぐらい吸ってしまった。
こちらもイラツク。
しかし、与信調査したら確かにその旦那の自宅所有権はあるものの、抵当権債務額も数千万円設定されているためか強制競売をかけても騙し取られてお金を取り戻すことは出来ない。
あくまで示談にするしかない。
しかも例え口座貸与責任を認めてくれるよう、こちらの思惑通りうまくいったとしても詐欺の幇助共犯に過ぎないからせいぜい認定司法書士の民事訴訟代理権の範囲である１４０万円ぐらいしか取れないと予測していた。
で、あろうから、最初から回収目標を１００万円と定めてこの事件に潜入したのである。少しでも被害者のために、と思っていたからだ。
八時半過ぎにすだれハゲで眼鏡をかけ、カバンを持った中年男が門の扉に手を掛けた。
ここだっ！！
とばかり、
その場を捉えて、名と司法書士である旨の自己紹介を簡単に挨拶して名詞を渡した上で
「貴方の口座が振り込め詐欺の舞台として使用された、責任を追及する」と切り出した。
すぐさまスダレハゲは「オレには関係ないよ、誰に通帳を渡したのかは覚えてないよ、いきなり何を言うんだ、早く、帰れよ」と激怒した。しかし司法書士は待ち時間の長期に亘る鬱積エネルギーが充電しているので引き下がらず、
「調査に協力してくれないのならば提訴しますよ、住宅ローンを抱えて資金繰りが苦しいかもしれないが、そうなったあこの家にも住めなくなりますよ、それでもいいのですか、少しは振り込め詐欺被害者の身にもなって欲しい、詐欺に加担し、小遣いを稼ぐような事をしていていいんですか、あなたはこんなことをいつまで続けるつもりなのか？いずれ警察が動きますよ、奥さんも困っていますよ」と責め立てた。
説得が功を奏し、自宅へ引き入れてくれたので詳しく口座貸与のやりとりシーンを再現してもらった。その間、トイレに行きたくてしょうがなかったが、なんとか我慢した。折角観念したのに生活臭を出してしまうとリズムが崩れるからだ。
ポツリポツリと話を始めた。
「数度、渋谷のゴールデン街にある喫茶店でブローカーに会い、通帳とハンコを渡したが名前は知らない、次ぎの注文はいつ来るか判らない」とのことであった。次回、もし、この話が来たら、是非連絡して下さい、その時は貴方を逮捕しないよう、刑事さんには頼んでおきますから、と言い残し、返済を約束させた。
民事上の返済についても合意した。その額、４０万、分割払い特約つき。これしか払えないというのだが、被害者もそれで十分です、よくやってくれた、と携帯電話で連絡がついたので後日示談書を送ることにした。
一方、司法書士事務所経営的に見ると・・
ここまでやって、司法書士報酬は実費込みで１２万円。
約一ヶ月かかり、あちこちに飛んで、調べて、交渉して、書類作成した。だから全然採算が合わない仕事。(;_;)ｳﾙｳﾙ
でも、感謝されたのでなんだか嬉しい。司法書士冥利につきる。(^o^)
モドル