その２６　　　生き別れの親に会う方法　　　（８/２８up）

　　　　　

ひろこさんは何不自由なく両親に育てられ、のびのびすくすく成長していた。
さて、就職する段に至り戸籍謄本を会社に提出するように言われて自分でとってみてびっくり。実は今まで実の親だと疑ったこともない両親は実は養父養母であったのだ。かなり幼少の頃にもらわれていたのであった。悶々とした日々を過ごす。
今までの育ての恩は決して忘れないが、いつか産みの親に会いたいと思っていたところある時、、中国残留孤児のテレビ番組を見て涙。
次第にその思いはつのるばかり。とうとう育ての親に打ち明けることに決心した。
戸籍にちゃんと書いてあるからいつかは判る時が来る、と養父母は覚悟していたが、真剣な話の切り口に接し育ての親もついにそのときが来たか、とばかり涙交じりに当時の様子を打ち明けてくれた。しかし、今、どこにひろこさんの両親が何処にいるかは判らないと言う。

その場は収め、何事も無く日々が過ぎる。
やがて結婚、出産、子育て、と忙しい日々が続いた事もあって、何故か産みの親に会いたいとも思わなくなっていった。
「私を捨てた親なんかに会いたくも無い」　　　　　　　
「無理に調べたところで会ってくれないかもしれない。」「私のことなどどうでもよいと思っているに違いない。」「会ってどうする、なんの話しをするのか」

そんな気持ちが片一方にあったことも確かだ。
しかし何か割り切れないものを背中に背負っているような感じがする。

それから更に十数年後のある日、突然警察から身元照会の電話があった。旅先で交通事故死した男性の件に関してで、実はひろこさんの実の父親であるとのことであった。母親は既に亡くなっていることもその時知った。警察の調査力はスゴイもんです。
飛行機に飛び乗り、福岡へ向かう機中では胸が一杯で何も考えることが出来なかった。
やがて警察の安置所で遺体と面会。この人が私の父親なのか。こんなことになるのであったら、もっと早く探し出しておけばよかったが、後悔、先に立たず。親孝行、後に出来ず。
ちゃんと仕事をしながら一人で生きていたんだ。地元の人や御客さんに世話になりながら、一人でここまで生きて来たんだね。
それ以上、遺体に話し掛けるも言葉がない。過去がない。

葬儀をあげて数年後、知り合った司法書士にこの件を話したところ、「そりゃ簡単ですよ」と言われた。

１．先ず貴方の現在の戸籍謄本を取得する。本籍番地は住民票に記載されている。
２．その現在戸籍がいついかなる事由により編制されたかを読み取り、その前の戸籍または除籍謄本をとる。
３．そして同様にその前の除籍謄本をとる。養子の戸籍を出世時まで辿ると実の親の戸籍に戻りそこに本籍地番が書いてある。
４．そこから今度は肉親の戸籍を請求し続け転籍や改製原戸籍謄本などを経由して実の親の戸籍に辿り着く。
５．その戸籍の附票をとると、そこに住所が書いてある。
６．104で確認して完了。

なあんだ、身内の調査ならばそんな方法でよかったのか。