実録敷金返還本人訴訟1

6月のある日、梅雨冷の中、困惑顔の若者がやってきた。話を聞くと、退去したアパートの大家から高額な原状回復費用を請求されて落胆している様子が伺えた。請求書の中味を見せてもらいながら、解約交渉や退去の際の話しを聞いた。
そして、この人なら少しばかりの知識と勇気を付けてあげれば本人訴訟で十分このトラブルを解決できると判断し、代理も代書も不要だと直感した。しかし勇気なんていうものは一旦自宅へ戻ればそのエネルギーが途切れてしまうもの。当面の分析と解説、そしてヒントとなるべき情報を提示し、宿題を示して差し上げた。

1・請求されっぱなしじゃダメだ、反論しよう。
2.よく読むと大家の請求にはどれも法的根拠がない
3.内容証明郵便記載事項の要点を説明
4.逆ショック療法として「業務つれづれ話の71と73」を事務所のホームページを開いてその場で見てもらう
5.以下本人訴訟で最終決着するまで無料で支援してあげるから頑張れ
6.楽しんで対応すれば苦も又、楽に転化するものだ、この経験は友人にも教えてあげられるから人助けにもなるやもしれないよ

数日して下記メールを頂いたので以下秋の最終決着までやりとりの一部始終をご紹介する。

_______________

○山と申します。去る6月17日、「へたくそな手書きの請求書」を手に突然お邪魔して敷金トラブルについてご教示頂いた、あの男です。
その節は大変力の湧くお話を頂戴し、本当にありがとうございました。お礼が遅れましたこと、お詫び申し上げます。

 さて、その後、付け焼き刃ながら素人向けの本2冊を購入し、初めて内容証明なるものをしたためました。司法の場に出ることも考え、実際には叶わぬだろ うとは思いながら、思い切って敷金二ヶ月分全額での請求書にしてみました。
 誤字脱字の訂正などあっては迫力が落ちると思い気を付けてはみたものの、一字一句間違うことなく原稿用紙一枚分の文章を書くのは思いのほか難しく、完 成までに7部も無駄にしてしまいました。
 この「敷金返還請求」を先日前大家に送付しましたところ、翌日矢継ぎ早に私の携帯に着信がありました!
頂戴したアドバイスどおり、大家からの着信は携帯の設定で機械的に拒否しているのですが、30分置きにず〜っと来る着信には軽い恐怖を感じました。
 とはいえ、大家がかなりうろたえているのは間違いなさそうです。これまで大声で一方的に怒鳴ることで我を通してきた人ですから、無視はこたえるので しょうね。
 
 ここまでがその後の経過です。大家が請求し、私が請求し返しただけ。全てはこれから、という気がしています。
 今は仕事の傍ら、インターネットなどで自説を補強しつつ、今後の展開を考える毎日です。


 あの日、當麻先生の仰っていた「百万円台の原状回復請求を無効にした事例」を拝見しました。まだまだ私の事例など、カワイイものだと仰った意味が解りました。
その他にもためになり、希望の湧くお話が沢山で、大変参考になりました。かさねがさね、ありがとうございました。
 なんとか自分もがんばってみます。しかしどうしても行き詰まったときは、お知恵をお借りできれば幸せです。

 以上、ご挨拶、ご報告まで。
                                                   世田谷区○○5丁目○-○ メンドーダ21 ○○号    ○山何某
________________
(返信)
當麻です。
貴方からのメールは差出人名が英文なので、毎日数十本来るウィルスメールだと思い、危うく消すところでした。
今後は出来れば日本名にしていただきたい。

悪徳大家になってしまった古い型の家主は
敷金を巡る法的処理変化という
昨今の事情を知りつつ、と言いながらも、実はまだ体全体で受け止めていないようです。
単に過去、大家が強かった時代の習慣と経験で意思表示しているだけです。
法治国家において、住宅事情が変化した現代においてかような古い型の大家を放置しておくわけにもいきません。

敷金を返さないばかりか
追い銭を請求するなどは言語道断。

でも、義憤=正義 を抽象的に論ずるだけでは内弁慶です。
これを具体的に表現する手段は司法しかありませんので、
時間と能力に余裕があるならばチャレンジしてみて下さい。

貴方の承諾が頂けるならば
逐次私のホームページに掲載していくつもりがあります。
勿論匿名ですが。
先の私のホームページに掲載した百万円取りたて事件も貴方のような立場の方を勇気づける素材として提供されたものだからです。

___________(○山さんからの返信)____________________


 早速のご返事ありがとうございます。
 差出人名については友人達との連絡用のものになっていることをうっかり失念していました。
どうか非礼をお許し下さい。今し方、設定を変更しました。今度は本名になっている筈です。
 
 ホームページへの掲載の件ですが、拒否する理由などどこにも見当たりません。そうすることで私などの体験が誰かの助けになるならば、そして當麻先生 (「先生」の敬称でいいのでしょうか)と連絡を密にできるならば、私自身にとってもどれほど心強いことでしょう。むしろこちらからお願いいたします。

 私自身がそうであったように、こうしたトラブルに突然遭遇すると、だれもが我を失い、我が身の不幸を呪うものです。
しかし月並みながら、そんなときこそ冷静になって周りを見回せば、自分と同じような、また、より以上に困難な状況に陥っているひとが大勢いること、
そしてそれらに打ち克ってきたひとが大勢いることが分かります。
おそらくはそうしたひとびとの殆ど全てが、自分の体験が他の誰かの助けとなることを望みこそすれ、拒むことはないと信じています。

 さて、その後ですが去る21日、東京簡易裁判所へ出向き、訴訟の方法について相談してきました。
まだ相手の出方をうかがっている段階なので訴状を提出するつもりはありませんでしたが、こういうことは常に相手に先んじていたいという心理からです。
裁判所は私たち素人が想像していたものとは少しイメージが違いました。厳格な中にも親しみやすさがあり、係の方も大変親切で分かりやすく応対して下さいました。
「よろしければ今こちらで訴状書いていかれますか?」とまで言われたときはさすがに驚きましたが。まるでファーストフード店です。
しかしそれくらいの処理速度が要されるほど、訴訟は日常茶飯事ということなのでしょうね。
「少額訴訟」、「支払い督促」の2種類の用紙を頂き、せっかくなので靖国神社に参拝もして帰宅しました。

 帰宅後は過去の敷金トラブルの裁判例、都内のハウスクリーニング会社の料金表など、資料集めに没頭。これほどインターネットがあってよかったと思った ことはありません。
集めた資料を読めば読むほど、自信が湧いてきました。
悩んでいたのが馬鹿馬鹿しく思えてくるほどです。

 また、内容証明が届いたと推察される先日26日は、14時30分から21時46分までの間に、前大家から計14回の着信があり、明けて27日は昼過ぎ に4回でした。いずれも着信拒否。
コンピュータの類は全く解らないと自分でも言っていた前大家は、どうやら着信拒否にされているのが理解できていないようです。なんだか気の毒になってき ました。
 夕方になると途端に着信がなくなりました。なにか別な対策でも考えたのでしょうか。
 ここで、福富県に住む父親が連帯保証人になっていたことを思い出し、すぐに連絡をとりました。
事情を説明し、万が一妙な請求があっても決して応じないように、と伝えると、父は笑って了解し「それは経過が楽しみやな」と答えてくれました。頼もしい 父です。

 現在の経過はここまでです。

 
 話は前後しますが、當麻先生にお会いした後、豪徳寺の仏前に合掌、先生をはじめ、助言と応援の言葉を下さった全ての方々との出会いに感謝の祈りを捧げ て職場に戻りました。
すっかり元気を取り戻して思わず口ずさむ鼻歌は必殺仕事人のテーマ『荒野の果てに』。
 「俺の〜 こころに〜 おそ〜れなーどーないさ〜  なーいーさ〜」
 
  失礼しました。本来は陽気な人間なもので、何かしらオチをつけずにはいられなかったのです。先生のHPの趣旨にそぐわないとお感じになったらどうぞ 削除なさってください。
                                                                    
                                                                       
こんな人間ですがどうか今後ともよろしくご指導下さい。
                                                                       
                               ○山何某

__________上記に対する返信__________
○英語表記○殿

> 今し方、設定を変更しました。今度は本名になっている筈です。

 差出人名は相変わらず英語表記のまんまですよ。^^;
英文の汚染メールが今朝も25本ぐらい入っているので、危うく読まずに消してしまうところでした。
私が2回ばかりこの件に触れるということは、単にウイルスメールとの認識を誤ることを防ぐ目的ばかりでなく、更に考えると
いかに相手の立場に立脚して考えるか、
という、癖をつけてもらいたいからです。
訴訟法では攻撃と防御と呼び、
攻撃力が強くても、防御壁が弱ければ裁判官は証明力の強いほうに味方してしまうから、
マージャン、サッカーやボクシングなど、およそ人間関係万事について、「相手の出方を伺う」
そのために情報収集する、という姿勢が大切です。

>  ホームページへの掲載の件ですが、拒否する理由などどこにも見当たりません。そうすることで私などの体験が誰かの助けになるならば、そして當麻先生
> (「先生」の敬称でいいのでしょうか)
> と連絡を密にできるならば、私自身にとってもどれほど心強いことでしょう。むしろこちらからお願いいたします。

それは有難いことです。他の若者にも参考になることでしょう。これが法治国家の幕開けなのです。
この種の裁判は本人で処理できるように設定されたのが少額訴訟制度ですし、敷金トラブルは数多くあるので
情報収集も比較的簡単です。
結果は殆どのケースにおいて和解ですが、
やるべきことをやり、(立証)、主張すべきことはきっちり主張しなければ和解に到りませんから、
しっかりと展開していきましょう。

>  私自身がそうであったように、こうしたトラブルに突然遭遇すると、だれもが我を失い、我が身の不幸を呪うものです。
> しかし月並みながら、そんなときこそ冷静になって周りを見回せば、自分と同じような、また、より以上に困難な状況に陥っているひとが大勢いること、
> そしてそれらに打ち克ってきたひとが大勢いることが分かります。
> おそらくはそうしたひとびとの殆ど全てが、自分の体験が他の誰かの助けとなることを望みこそすれ、拒むことはないと信じています。

この取り組み姿勢はとてもよいですね。今後の貴方の人生展開にも有用となるでしょう。
災いは突然訪れる迷惑な訪問者だが、
情報が得られるならば、大脳による分析を経て、今後の展開、負担すべき金額など、未来が見えてきます。
見えるならば怖いことはない、見えないから怖れるのです。
段々明るくなってくることでしょう。

>  さて、その後ですが去る21日、東京簡易裁判所へ出向き、訴訟の方法について相談してきました。
> まだ相手の出方をうかがっている段階なので訴状を提出するつもりはありませんでしたが、こういうことは常に相手に先んじていたいという心理からです。
> 裁判所は私たち素人が想像していたものとは少しイメージが違いました。厳格な中にも親しみやすさがあり、係の方も大変親切で分かりやすく応対して下さ
> いました。

この分野は大幅な改革が裁判所でなされました。司法行政というジャンルです。
多重債務者分野では禁断の釈明たる「消滅時効」まで指導しておりますが、地裁以上は絶対にそれは言わないことになっております。
少額訴訟は一発回答、即日結審即日判決言い渡しが原則ですから、特約などをよく読み、仲介人がいかなる陳述書を書くか、それを予想します。
テナントはいずれ出て行く人、大家はずっと仕事を廻してくれる人、
となれば仲介人は大家寄りの姿勢を保つのが普通。

> 「よろしければ今こちらで訴状書いていかれますか?」とまで言われたときはさすがに驚きましたが。まるでファーストフード店です。

行ったならば書けばよかったのに。
難しい書式ではなかったはず。チェックシート形式。プロは使えないし、使わない。
アマでも出来るようになってますから。


>  帰宅後は過去の敷金トラブルの裁判例、都内のハウスクリーニング会社の料金表など、資料集めに没頭。これほどインターネットがあってよかったと思っ
> たことはありません。

道具は使い様。

> 集めた資料を読めば読むほど、自信が湧いてきました。悩んでいたのが馬鹿馬鹿しく思えてくるほどです。

でしょ。私が相談を受けたとき、一分ぐらいで結論を出したように、あなたは気が付きはじめたのです。
よいことです。

>  また、内容証明が届いたと推察される先日26日は、14時30分から21時46分までの間に、前大家から計14回の着信があり、明けて27日は昼過
> ぎに4回でした。いずれも着信拒否。

着信拒否は良いことです。あなたは大家さんの電話番号をご存知ですか?
逆襲もまたしかり。相手の立場にたって深夜公衆電話から攻撃するという卑怯な手もありますよ。
何故なら14という数字が異常だから。
もしかしたら粘着質タイプかもしれないから、カウンターを打っておくという手もあります。
いま、双方が背丈ほども伸びた葦の原っぱで深く身を潜めながら手裏剣を磨き、本数を確認しているというイメージです。

> コンピュータの類は全く解らないと自分でも言っていた前大家は、どうやら着信拒否にされているのが理解できていないようです。なんだか気の毒になってきました。

いいか、ひとたび勝負になったら、勝つか負けるか二つに一つ。
他には何もない。

>  夕方になると途端に着信がなくなりました。なにか別な対策でも考えたのでしょうか。

多分狼狽中ですね。
脳裏が麻婆豆腐みたいにぐちゃぐちゃになっているんじゃないか?

>  ここで、福富県に住む父親が連帯保証人になっていたことを思い出し、すぐに連絡をとりました。
> 事情を説明し、万が一妙な請求があっても決して応じないように、と伝えると、父は笑って了解し「それは経過が楽しみやな」と答えてくれました。頼もし
> い父です。

いきなり連帯保証人宛てに提訴する可能性もあるが、通常は東京へ移送されるから大丈夫。
移送申し立てのところも読んでおいて下さい。
電話には対応せず、受け取ってしまった書類はあなたのところへ転送するよう、伝えておいて下さい。


>  現在の経過はここまでです。

了解しました。

>  
>  話は前後しますが、當麻先生にお会いした後、豪徳寺の仏前に合掌、先生をはじめ、助言と応援の言葉を下さった全ての方々との出会いに感謝の祈りを捧
> げて職場に戻りました。

人間は社会性をもった動物。
前者は人間関係がメイン項目。
人間嫌いは自分の活動領域をせばめるだけ。

> すっかり元気を取り戻して思わず口ずさむ鼻歌は必殺仕事人のテーマ『荒野の果てに』。
>  「俺の〜 こころに〜 おそ〜れなーどーないさ〜  なーいーさ〜」
>  
>   失礼しました。本来は陽気な人間なもので、何かしらオチをつけずにはいられなかったのです。先生のHPの趣旨にそぐわないとお感じになったらどうぞ削除なさってください。

暗い性格の持ち主には情報が入らない。→自分の内心を責めつけ、自虐的になる。
明るいやつは悩みをぶちまけるから情報が多角的に入るので視野が広がり、
相手にとって効果的ダメージを与える攻撃方法を知ることになる。
                                                       
これが早期解決の根本だけれど、
あなたの場合はもう少し裁判所で遊んでみたらいかが?
知的ゲームだと思えば、苦も楽になる。
時間と大脳分析に時間をかける→量的努力→相手の出方を予想するなどして、苦痛が楽しみに変わる
唯物弁証法第二原則;量質転化の法則なり。             

_________○山さんからの送信__________

 ○山です。
 本当に申し訳ありません。
 大抵の人はそうだと思いますが、同じミスを二度も指摘したにも関わらず、もう一度繰り返す者がいたら怒りますよね。私なら怒ります。
 自分の機械で直接確認する方法が分からないのですが、携帯に送信してみたところ大丈夫だったので、今度という今度は”英文”ではなく「○山弘」になっているのではないかと‥‥。
 勝訴への自信は湧いてきましたが、パソコン操作の自信は失っている昨今です。
 
 前回のメール、また、28日にお電話したときは、ご多忙にも関わらず大変丁寧なご回答を頂戴しまして、恐縮するばかりです。

 こちらの状況には弱冠動きがありました。お電話でお伝えした内容と重複することが多いのですが、當麻先生のHPに記載して頂ける時のことも考えて、今
ここにまとめさせて頂きます。

 前大家が賃貸契約書にある「勤務先」に「○山を出せ」と電話してきました。非常識といえば非常識ですが、こちらが着信を拒否している以上、考え得る展
開だったのかもしれません。
 先生のご指摘どおり、敵はかなり粘着質な人間だったのです。先手を打って実家に連絡しておいて良かった、と胸をなで下ろしました。
 聞けば、本名も名乗らず、相当態度が悪い印象だったそうです。さすがは「30秒話すだけで嫌われる男」。私にはその様子がつぶさに想像されます。早速
職場を抜け出して、謝りに行ってきました。
 
 ここで少し、私にとって幸運なハプニングがありました。この「勤務先」にはかつて私とは別の「○山」さんが勤務しており、十数年前に退社されているそ
うです。
 応対の女性がこの方と私を取り違え、「○山は十年前に辞めた」と前大家に伝えたのです。私はアルバイト扱いですがちゃんと在籍していました。
 この勘違いのお陰で、もうこの会社に迷惑な電話はかかってくることはなさそうです。ヤクザな商売でぽんぽん仕事場が変わる私ですが、今回ばかりはそれ
が功を奏したようです。
 
 一方、前大家は喜んだでしょう。私が勤務先を偽って契約を結んだこと、そしてそれを証明する手段を手に入れた、と思ったのですから。
 応対の女性に「裁判所から電話があったらこのことを話せ」と約束させて電話を切ったとのこと。
自分は名乗らないくせに、女性には名前を訊こうともした そうです。もちろんその女性は応じませんでした。
 昨日、着信拒否の携帯ににいつまでも電話し続ける前大家を少しでも気の毒だなどと思った私が甘かった。まともな人間ではないと以前から思っていました
が、これほどとは!
 私の頸動脈のあたりに、ふつふつと赤黒い負のパワーが湧いてくるのが分かりました。今流行りの言葉で言うと、「フォースのダークサイド」というやつで
す。
 
 先生は「そんなもんなくても大丈夫」と仰いましたが、念のためお願いしたところ、受付の女性はこのときの誤りを証明する覚え書きを書くことを快諾して
下さいました。
 しかも、社名と個人名の印鑑入りです!こちらからは言い出しにくくて遠慮しようかと思っていたのに、「じゃあ印鑑も押しておきましょうね」と自らすす
んで押して下さったのです。
 社長にまで「大変なことになってるみたいだけど、がんばって。何でも力になるから」と暖かいお声を掛けて頂きました。迷惑かけたのはこっちなのに。
 今まで真面目にやってきて本当に良かった。私は必死で涙をこらえて事務室を後にしました。

 思い出して今、涙が溢れています。

「自分の前に敵がいっぱいあらわれたときは振り返って見よ。味方がいっぱいいるものだ。」生田長江
 聞きかじりながら、思い出した言葉です。

 當麻先生、先生の仰るように、前大家がこうして得た情報が裁判でプラスに働かないということは、敵の手裏剣の一本目はハズレたわけですよね?
 私は決めました。研ぎ澄まして、カエシを付けた手裏剣を全部命中させてやりますよ。毒をたっぷり塗ってね。
                                                                       
                           ○山何某
________上記メールに対する當麻からの返信↓_____________
當麻です

>  勝訴への自信は湧いてきましたが、パソコン操作の自信は失っている昨今です。

今回はちゃんと直っております。私の要望に対応していただきまして有難うございます。  

>  前回のメール、また、28日にお電話したときは、ご多忙にも関わらず大変丁寧なご回答を頂戴しまして、恐縮するばかりです。
>
>  こちらの状況には弱冠動きがありました。お電話でお伝えした内容と重複することが多いのですが、當麻先生のHPに記載して頂ける時のことも考えて、
> 今こにまとめさせて頂きます。

リアルタイムで流したら面白いのだけど、
手の内を万が一見られたらまずいから、決着がつくまで温存します。
芸術関係大学の出身なのだから感情起伏を込めて報告してくださると有難い。
あなたには表現力があるからできるはず。

>  前大家が賃貸契約書にある「勤務先」に「○山を出せ」と電話してきました。非常識といえば非常識ですが、こちらが着信を拒否している以上、考え得る
> 展 開だったのかもしれません。
>  先生のご指摘どおり、敵はかなり粘着質な人間だったのです。先手を打って実家に連絡しておいて良かった、と胸をなで下ろしました。

攻撃防御方法のことです。訴訟上は相手の弱いところから、自分の立証においては確実性の高いところから責めます。
債権が二つ対立している現在の状況ですが、債権の債とは、人を責めると書きます。人を責める権利を債権というわけでして、
大家は原状回復義務違反に基くリフォーム代金請求権を債権とし、
こちら側は賃貸契約書に基く敷金返還請求権を債権とする。
裁判官は法律上の根拠に基いてジャッジする立場にあるが、いくら判を押しても、法律上無効な条項については無視し、請求の根拠を否定する。
一方、敷金は契約関係が継続している最中における賃料不払いの担保であるから、契約終了時点で元借主に返還請求権が発生し、
これを無効とする法律も判例もない。
従って、当方は主張立証が簡単であり、大家は特約の有効性、請求金額の妥当性を立証しなければならない。
通常損耗とは思えないほどひどい使用をしたのであれば、その写真、写真に対する日付けと仲介人などの証言または陳述書の提出を
準備しなければならない。
簡裁では証人の出頭を求めない扱いだから、証人の出廷を必要とするならば、簡裁ではなく地裁へ提訴するでしょう。
その時でも慌てる必要はない。
当方はやるべきことは同じだから。

>  聞けば、本名も名乗らず、相当態度が悪い印象だったそうです。さすがは「30秒話すだけで嫌われる男」。私にはその様子がつぶさに想像されます。早
> 速職場を抜け出して、謝りに行ってきました。

ここがあなたの良いところですね。
しかし双方とも儒教精神的人格攻撃バージョンに陥ってますな。
裁判所が聞きたくない部分です。
ですから、貴方の印象を良くするため、相手から言わせましょう。どんどん。

>  ここで少し、私にとって幸運なハプニングがありました。この「勤務先」にはかつて私とは別の「杉山」さんが勤務しており、十数年前に退社されている
> そうです。
>  応対の女性がこの方と私を取り違え、「杉山は十年前に辞めた」と前大家に伝えたのです。私はアルバイト扱いですがちゃんと在籍していました。
>  この勘違いのお陰で、もうこの会社に迷惑な電話はかかってくることはなさそうです。ヤクザな商売でぽんぽん仕事場が変わる私ですが、今回ばかりはそれが功を奏したようです。

契約時点における職場の誤記は本件に関係なし。
それをラッキーポイントだと思い込むこと自体、「昨今の敷金トラブル事情は理解していますが・・」に関連していない証拠。
大家さんはわかってないんですね、本当は。

>  一方、前大家は喜んだでしょう。私が勤務先を偽って契約を結んだこと、そしてそれを証明する手段を手に入れた、と思ったのですから。
>  応対の女性に「裁判所から電話があったらこのことを話せ」と約束させて電話を切ったとのこと。自分は名乗らないくせに、女性には名前を訊こうともしたそうです。もちろんその女性は応じませんでした。

ヒマな割には横着だから味方を失う。
唯一の味方は仲介人でしょう、次ぎの仕事を餌にしているから。
でも、不動産屋さんは裁判嫌い。出廷したってギャラもらえるわけでないし。
第一、仲介料を払ったのは貴方でしょ?

>  昨日、着信拒否の携帯ににいつまでも電話し続ける前大家を少しでも気の毒だなどと思った私が甘かった。まともな人間ではないと以前から思っていましたが、これほどとは!
>  私の頸動脈のあたりに、ふつふつと赤黒い負のパワーが湧いてくるのが分かりました。今流行りの言葉で言うと、「フォースのダークサイド」というやつです。
>  
>  先生は「そんなもんなくても大丈夫」と仰いましたが、念のためお願いしたところ、受付の女性はこのときの誤りを証明する覚え書きを書くことを快諾して下さいました。
>  しかも、社名と個人名の印鑑入りです!こちらからは言い出しにくくて遠慮しようかと思っていたのに、「じゃあ印鑑も押しておきましょうね」と自らすすんで押して下さったのです。
>  社長にまで「大変なことになってるみたいだけど、がんばって。何でも力になるから」と暖かいお声を掛けて頂きました。迷惑かけたのはこっちなのに。
>  今まで真面目にやってきて本当に良かった。私は必死で涙をこらえて事務室を後にしました。

人徳は日々もまれながら試されているのです。
試しているのは世間の皆様ですが、誰彼となく特定できないから、これを人は「神」という抽象概念でくくり、その存在を証明できなくても実感しているのです。
そうでなけりゃ、社長の一言や対応女性の印鑑まで話の中に出てきません。
出てもらえないために悪戦苦闘している訴訟依頼人も沢山いるのですよ、世間には。
あなたは恵まれているほうです。
そして、それは貴方の気持ちの反射効でもあるのです。

私のホームページには何度となく「勘定は感情」という言葉が出てきます。
「出来る範囲で協力してあげるわよ」という感情は、損得勘定抜きの言葉です。言葉は感情表現の一部ですから卑しさが抜けたわけでして、大脳分析から右脳行動へとシフトした瞬間に触れた貴方は涙を流したのでしょう。

> 「自分の前に敵がいっぱいあらわれたときは振り返って見よ。味方がいっぱいいるものだ。」生田長江
>  聞きかじりながら、思い出した言葉です。

これは勇気付けられる言葉ですね。
普段からやるべきことをしていない人には味方は出ません。突撃段階に到っても、振り返れば皆5mも10mも後ろできょろきょろ見ているだけ。
だから組織の長には人徳が求められるのです。お金だけじゃ、業界全体が順風満帆の時しか人は動いてくれない。
ピンチにたってから初めて人の恩がわかる。倒産してから初めて本当の敵味方が理解できるものです。

>  當麻先生、先生の仰るように、前大家がこうして得た情報が裁判でプラスに働かないということは、敵の手裏剣の一本目はハズレたわけですよね?
>  私は決めました。研ぎ澄まして、カエシを付けた手裏剣を全部命中させてやりますよ。毒をたっぷり塗ってね。

もっと手裏剣を投げ続けさせると面白い展開になる。
空振りしたエネルギーほど堪えるものはないから。
聖書にいわく「私の拳は空を切らない」と。

             続く