結婚契約書作成代理人T
甲州遊侠伝
時代 幕末
場所 甲州東八代郡 鉄火場
キャスト 吃安こと竹居の安五郎と博打好きの黒駒の勝蔵
背景 甲州の名馬である黒駒を生育している村の出身である勝蔵は夜中まで博打をしていたが、ある時負け越しが続きお金がなくなったところを追い込まれ、熱くなって興奮気味に言い訳したり開き直ったりしていた。
それを見た賭場管理人たるドモ安は普段はおとなしいのだが今度ばかりはついにぶち切れた。凸(▼ﾛ▼メ)おら〜
最初は勝蔵に説教してからと思ったけど、思うように言葉が出てこないので、そんな自分に対しても腹が立ち、面倒くさいからドドットどもっていきなり刀を抜いた。ホトケのども安 鬼より怖い どどっとどもって人を斬る
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う〜ん これ いいねー(^.^)
なんか 感情をストレートに出せる場面っていうのは現代社会ではあんまりないもんねー(^.^) ストレスが溜まらないことはいいことだ。
なんていう話を居酒屋でしているとふと思い出したあの光景。その舞台は
時代 平成一桁の終わり頃
場所 四谷の高級焼肉店（上ミノ一人前２０００円）
キャスト 古美術商の社長クミコ（既婚の中年美人）、その姉ユキコ（今は無職だが資産家）、生活がやっとという感じのバツイチの３０台後半男磯次郎、まご太司法書士兼行政書士の四人
その夜の宴会は約６人ほどのお客さんが新幹線で帰るため
八時頃中座したところから始まった。
無事巨大プロジェクト用地取得の契約と決済が終わり、売買代金の１億９０００万円を支払って登記決済が終了したことを受けて今日に至るまでの長い交渉の経緯や裏話を肴にして盛り上がった。(^O^)／C□☆□D＼(^_^
)ｶﾝﾊﾟｰｲ!
既に先客接待のトークと飲食でたらふく飲酒したうえで更に土地の買主側の身内だけで飲み明かそうというのであった。今後の建築、企画、設計を初めとする第二のスタートを切る前祝も兼ねているので、口々に今度作る美術館のデザインやお土産品、スクリーンプロジェクター、HP、看板、チケットのデザイン、陳列する予定の美術品を引き立たせるショーケースの照明や夜間ライトアップ、備品の配置、お土産品コーナーの天井の照明や壁の配色や商品の仕入れルート、喫茶コーナーの経営など建物全体のイメージやその他全般の色や形について提案発言を繰り返し、がっぽり儲かるぜ、と捕らぬ狸の皮算用をしていた。
夢は現実より先行する。夢を語ることが出来なければ目標を定めることが出来ない。
３本目の焼酎ジンロも半ばに差し掛かった頃には話しも夢物語も一段落したので、話題は今後の各自の人生進路に移り、建築工事に入るクミコさんは美術館の館長へ就任すること、孫太は自分の仕事が終ったから今日でいったんお別れすることだけが明白になっていたが、未婚のユキコ問題に頭を悩ます妹クミコが建築営業部でバツイチの磯次郎に酔っ払った勢いで笑顔を交えながら提案した。
クミコ「ねえねえ、イソちゃん、うちの姉のこと(^.^)、・・・うふふ(^.^)・・どう思う？ えへっ(^.^)なかなかいい女だっていうような顔してるじゃな〜い？」
（会話が色欲に及ぶとそろそろ議論も終盤に差し掛かっている証拠。車中の会話ならばそろそろ目的地も近い証拠）
磯次郎「はい、今後ともクミコ社長さんの美術館が大いに繁盛するように素晴らしい建物を建築して頑張りますよ(*^ｰﾟ)v＾」
クミコ「話をずらさないでよ、まだ酔っ払ってないんでしょ？ねえねえ、うちのユキコさんて年の割には素敵でしょ？昔は美人だったのよ、今も面影が残ってるでしょ？(^.^)頭もいいのよ。ドル安になる前にフロリダのコンドミニアムもしっかり売却にしてたらふくお金を持ってるのよ、o(^o^)o
ﾜｸﾜｸ 私には一銭も貸してくれないけど・・」と姉を出資要請に関連して牽制しながらも磯ちゃんとくっつけて永年独身に終止符を打つ手助けをし、それでもって恩を売ろうという魂胆が見え見え。商売は先に売ることが秘訣。商買ではダメ。その鉄則を心得ている如きなり。
まだ結婚話は始まったばかりなので孫太は笑顔で沈黙を守る。
さて、これからどうなる？
磯次郎「あのー僕はまだ離婚して３年しかたってないからー・・・・(;_;)/~~~」といいつつ焼酎グラスの中に逃げ場を求めつつ生唾ごっくん。その時の心境としては「コレデモムカシハビジンダッタノヨ」という部分が少々ひっかかってたのではないかと推測しているが真相は不明。
回答の言葉が少ないので、そうならもっと口攻撃だ、とばかり続けるクミコ社長「あ、あのときの奥さんったら秋田美人だったらしいわね、アタシ会った事ないけど、で、まだ未練あるの？浮気がバレて逃げられちゃったっていう話は本当？えっ？何っ？そんな小さな声じゃ聞こえない。もっと大きな声でしゃべってよ。」と、突っ込む。
磯次郎は暗い過去を知られていることに仰天しながらもうなだれて小さな声で答える。「もう、自分には未練はないですですですよー。(/_;)ｼｸｼｸ」
クミコ「ん？デスデスデスヨーって、なにドモッテんのよー・・あ、そう、あら、それならこの話は目出度く行きそうね。ユキコ姉さんはもちろんこの人で満足よね？あら、その目が正直に物語っているわ。じゃ、早速手続に入りましょう。(^.^)」
この間３分。いやぁ、実に電光石火の結婚仲介業務でんなー もうまとめちゃったよ。 実に感心だよこのリズム。「何ドモッテンノよ」という鋭い突っ込み。まるで痛いところを見抜かれた様子。やっぱり中年の結婚にも火付け役が必要なのである。双方じっとしたまま動けないでいるとその熱い想いを秘めているだけではやがてそれも冷めてどこかへ消えさるのみ。
だから鉄は熱いうちに打て。２人の恋は熱いうちに語れ！急げメロス！目的地は近い。(
▼▼)r☆･･･-バキューン
クミコ社長「はい、じゃあセンセっ！書類のお話をどうぞしてくんなまし(^.^)」
既に売主を交えた懇親会を経てもう４時間も焼肉屋に居るのでそろそろ帰る心づもりの孫太は俄然このリズムを感じて目が覚める。久しぶりにウエーブが来たと感じたからだ。かくも鋭きリズムを持ったトークはなかなかお目にかかれない。そこでいっちょこの罠にはまることにした。
孫太「へい、それじゃ、代書屋孫太の出番が来ましたようで。婚姻届の書式はこの携帯ノートパソコンに入ってますので後はプリンターと接続するだけです。証人もほらここに２人居るから丁度いい。目出度い話はさっさと実行することが肝要でございます。奥方様、直ぐに手続しましょう。(^ー^)にやっ！」とジョークを飛ばす。（でもその日はあいにくパソコンなんか携帯していなかった）
磯次郎は周囲の激しい追い込みに対してなんだかいたたまれなくなって・・o(><;)(;><)oジタバタ ・・小さな反撃を開始。
磯次郎「パソコンなんかどこにもないじゃないか。それにまだ僕はユキコさんと結婚するなんて一言も言ってないし。((
(;_; ) ( ;_;) ))ｲﾔｲﾔ」
孫太「ばーか、クミコ社長が結婚宣言をしたときにすぐに反論しなかったから君は不作為犯としての責任を負うのだ。だいじょうぶ、おいらがタダで証人になってやるよ。代書料は餞（はなむけ）だと思ってありがたくちょうだいしろや。(`_')ｷｯﾊﾟﾘ」
と民事も刑事もごた混ぜにして素人の磯次郎を威圧する。酔うほどに勢いが増す二人に立て続けに口による攻撃をうけたのでは磯ちゃんはたまらない。思わず「あのーカルビ二人前追加でお願いしますー それに氷も」と焼肉屋のママに告げて話題をそらそうとする。不利な話を反古にするにはその話題から遠いテーマをこしらえるに限る。んで、逃げようとしたのだが・・ﾆｹﾞﾁｬｵｰｯﾄ...(((((
((;^^)
しっかしだなー そんなフェイントを許すほど社長は甘くない。なにせ歴戦のつわものでっせ。そんな手に乗るかいな。カルビ発言なぞ即座に無視。更に沈黙を許さず。口も脳もその動きを止めたのではリズムが狂う。５倍しゃべって相手には一言しか言わせない。動かなければ固く閉じこもった心もちをズバリ言い当ててその心を動かす。実に適確な表現ポイントを押さえているからイソちゃんも軽視できない。
更に話相手が勝手な方向に動くならば牽制して制止する。無視すれば笑顔とフェロモンで呼び戻す。常に相手に考えるスキを与えず。寄らしめるべし。くすぐったり脅したり持ち上げたり落としたり。硬軟両用縦横無尽の話術。(@｡@)ｽｺﾞｽｷﾞﾙ･･･
なにせテンポもリズムも既にこっちのテリトリーに入っているのだ。これぞ交渉の極意。土地を買うのも説得力。結婚話をまとめるのも説得力。上司を説得できないサラリーマンはお客も説得できないから営業成績が上がらないのは当然の現象。ヘボサラリーマンの磯次郎の「人柄」や「誠意」ごときだけではマネーには結びつかないのだ。理性的に要件事実を積み上げて説得する論理学と文学から得る豊かな表現力が必要なのである。だからもしその涵養があれば目の前にいる社長とユーモアを交えた激論をかわせばよいのに、一方的に攻め込まれてタジタジとなっている。だからといっていまさらその場で学ぶことや吸収することすら出来ない。ゴルフコースへ行く前に練習するように、社会に出る前に勉強しておくべきであった。が、もう、遅い。授業は終わり、既に実践ゼミに突入してる。
クミコ社長「あら、ユキコねえさんもイソちゃんもよかったわねー、歩く契約書みたいな方がお友達で。今日は目出度い事が二つも重なっちゃったから花束は私が二人に向けてプレゼントするわ(^.^)」と言いながらいきなり携帯電話で六本木のフラワーショップへダイヤルする。
どひょー こんなに素早い行動を見るのははじめてだなあ。お花屋さんはどうやら本当にショップの中で適当な花を探そうとして在庫を探しているらしい。時々聞き役に廻っているもの。リアルな間合いだ。電話片手に花屋さんと会話しながら少しでも間があくとテーブル席に向かって攻撃的質問が笑顔と一緒に飛んでくるからたまらない。
「挙式はどこの式場であげるの？紀尾井町の○○ホテルだったら支配人に顔が利くわ、役員さんとも仲良しだし」
「披露宴は何人くらいお呼びするの？」
「子供は何人くらい欲しいの？」
と、連続の質問攻め。
このアップテンポのリズムの良さが磯次郎のの反論を許さない。考慮する間がもたない。でも直ぐ反応しないとみなし承認だ、とか言われて既成事実を作り上げられ、固められてしまう。「クソッ！孫太の野郎がやけに邪魔だ。さっきまで酔っ払っていたのに急にマジメな顔になっちゃって、クミコ社長の言葉を冷静に分析して短い言葉にまとめやがるから妙に筋のとおったな話になってきちゃったじゃないか┓(´_`)┏オーノ〜」
などとわずかな時間、心に思っている間にも国会予算委員会よりも厳しい質問が矢継ぎ早に繰り出される。それはまるで波状攻撃の如く相手に休む暇を与えない。そのくせ良縁だの新婚旅行だの浮いた話も交えるので不快感も与えない。総大将クミコ社長に付随する孫太司法書士軍、それを見守るユキコ姫部隊、それに対して時折かすかな声でわずかに抵抗する磯次郎軍。まるで押しては引き、ひいては押す大阪夏の陣。が、３対１ならば所詮多勢に無勢、情勢は刻一刻と徳川方三位一体連合軍へと傾くのであった。
孫太が感心しながら飲みかけの焼酎に赤ワインを垂らして色づけしながら飲み干していると電話を終えたばかりのクミコ社長から再び連続口攻撃再開。
クミコ社長は間発をいれず「さ、センセッ！早く書類を書いて頂戴な(^.^)」
と、すかさずテーブルの対面にいる孫太に振ってきたものの、用紙もペンもない。アワ食ってしまったマゴタセンセイはそれでも本日の立会い登記第二部幕開けの潮流に乗るべき、と即断した。
このリズム。折角盛り上がったのだからメンツにかけても無粋な受け答えは出来ない。
やれ要式行為だから口頭承諾ではダメだ、婚姻は届け出だけではなく受理が法律要件だ、添付書類は・・・・・なんてーな事は言えない。法律なぞ愛のシモベに過ぎないのだから。
お嬢さん育ちのユキコさんはさっきからニコニコ笑ってみている。(o^v^o)ﾎﾆｮﾝ
この結婚話に対しては特に否定はしないからまんざらでもない様子。血祭りにあがったのはもっぱら人のよい磯次郎(；ﾍ；)な、泣いてないやいっ。
大学時代は体育会にも所属せずぶらぶらしていたし、それで結構もてたんだからしょうがないや。なんだか酔っ払っているうちに段々とマジな話になってきて外堀を埋められたような不利な状況を感じてか目線をユキコさんからずらす。ここで目線が合ったら一気に席替えへと駒を進められてしまうことになる。隣に座ることにもなれば、マゴタと社長は「じゃーねー(^o＾)／~~さいなら〜」とか言って消えうせるにきまっている。このままじゃヤバイ。冷や汗が出てきた。(T.T
) ( T.T) ﾀﾞﾚｶ-
さて一方、社長から実力テストを渡されて困った孫太はレジでボールペンを借り、テーブルの上にあるナプキンを広げて書類作成することをひらめいた。
状況はわかったけれど、書く文書の内容がわからない。でもなんとかリズムを保つためにはこのまんまやっちゃうしかないなあ。が、人間、追い込まれると打開策をひねり出すものだ。しかもひとたびアイデアが出ると実行は素早い。お皿を隣のテーブルにゆっくり一枚ずつ寄せ、ガスの炎がかからないよう手厚く配慮してから紙を広げる。間がもたない磯次郎がなんとか劣勢を挽回すべく風向きを変えるためにカルビを焼き始めたからだ。タレの入った皿もわざとこちらに寄せてきて書きにくくしようと妨害する。しかも急に黙りこくってる。仕事に集中し専念する孫太とは対照的なゆっくりしたリズム。考えながら食べてるんだな？と優勢を確認する孫太。（利いてる利いているぞ、口による攻撃が。イソのダメージは相当大きい。笑顔作っても瞳が笑ってないもん）ｳｯｼｯｐ(^0^)ｑ
突然磯次郎が「ほれ、孫太さん、これ、もう焼けているよ」と香ばしいカルビをお皿に載せてくれ、暗に仕事の中断を企てるが、ふん、そんな誘惑にはまる孫太ではない。契約書作成代理人の倫理は厳しい。なにせ、善管注意義務、忠実義務があるから懸命にやらなくっちゃならない。隠れたる目的を散りばめた内容のものを作るときもある。離婚させたくない場合は解約ペナルティーをきつくするし、離婚手続簡素化を狙ったもの、抽象的な意味不明のものでタイトルのみ明確なものなど様々だ。どのあたりに視点を置くかによって当事者の満足度は違ってくるから最初に動機を聞き出さなければ良い作品はできない。とかく契約書は当事者のために作るのだから顧客満足度を最大限に尊重しなければならない・・・などの基本的スタンスを考える。
満腹酩酊の女性軍２名はもうハシを付けないから磯次郎だけが独り寂しく食べる。ボソボソ。(-｡-;）
さて、肝心の書類だが、タイトルは「結婚契約書」である。身分関係の書類はすっかり忘れちまったので明日、追い込みをかけて正式な身分関係書類を作るための仕様にする。後日この契約書が結婚回避城の外堀どころか内堀までもを埋めてしまうことになる。そのような機能を付加して明日はマジで責めることになる。隣で磯次郎が心配そうに見つめるがその視線を物ともせずすらすらとボールペンを紙の上に走らせる。もうこうなったら勢いだ。ひたむきに書き続けるマゴタ君は少しも筆を休めない。まるで日本中の契約書が頭の中にインプットされているのか？と磯次郎は土地売買交渉中の出来事をふまえてイメージを浮かべていた。申請書、念書、覚書、上申書、委任状、確認書、説明書、経緯書、届出書、などの書類作成をしていたっけ。
世の中はなんだかんだで決め手は紙。文書で決まるもの。だからやばいんだよ、孫太が今書いている文書は、一体何なんだよ。イソは焼酎グラスを片手に益々心配になって覗き込む。?(゜_。)?
チンプンかんぷん
文書の内容（契約書作成代理人孫太も酩酊状態にて結構つらいものがあったが頑張っていた）ｐ(｡･_;｡)ｑｶﾞﾝﾊﾞﾙｯ
第一条 ユキコさんを甲、磯次郎さんを乙として以下のとおり結婚契約を締結する。
第二条 乙は生涯浮気することなくひたむきな愛を甲に提供しなければならない。
第三条 甲は生活費の補填義務を負う。
第四条 後日行う正式な届けの証人としてクミコ社長と孫太を指定する。
第五条 この契約書に署名押印しないで一方的に破棄した当事者はクミコ社長にメンツ丸つぶれの慰謝料として金２０万円を支払う。
第六条 婚姻届に協力しなかった当事者はそれぞれ相手方に対して損害金５００万円を支払わなければならない。
（重要事項の羅列ばかりでなんだか意味不明の内容になっている・・・）