○○荘入居者各位
家賃変更事項についてのお知らせ
皆様がたにおかれましては益々ご清祥のこととお慶び申し上げます。
さて、毎月お振込み頂いている家賃につきまして、このたび当方におけるシステムコンピューター管理システム導入に伴い、振込み先銀行と口座番号が変更になりました。来月分より下記の新しい口座にお振込み下さるよう手続きをお願い致します。尚、自動引き落とし手続きの方もしくは既にお支払い済みの場合はその翌月分の支払いに間に合うようお手続きをお願い致します。誠に急で勝手でございますが、何卒よろしくお願い申し上げます。
敬具
○○銀行マルマル支店 普通預金口座 １２３４５６７ 家主名
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世田谷には賃貸住宅が多い。教育機関が多く、又、神社仏閣も多いので２３区の中では住み心地が良い住環境が整っているからだ。
その一方、家主の高齢化が進んでいるので入金管理がおろそかになっている方もいる。うっかり１ヶ月くらい家賃の支払いを飛ばしてしまい、催促されて慌てて２ヶ月分を振り込む入居者もいるし、事前に振込み遅延電話をしてもそのメモを亡くしてしまっている大家さんもいる。
賃貸人賃借人双方において毎月きっちりとした契約の履行が行われないという経験があると、かような虚偽通告書に対しても思慮深く対応せず、忙しさにかまけて確認電話もせず、つい言う成りに払ってしまうことがある。その手口を一回でも味わえば、詐欺師としてはこのうえもない喜びとなる。
悪は防止しなければならず、それは健全な社会のために各自が日頃より自覚しておかねばならない。それは自分だけの悔しさに陥ることを防ぐだけでなく、社会全体の不正を減らすことに繋がる。人間社会は人間が寄り集い助けあいながら生きていく社会。狐や狸や森や自然もそれぞれのバランスを保っているがごとく、人間も個人とオオヤケのバランスを常に意識していかなければならない。
この文書のミソ部分は
@アパート名を入れること。現実性を加味している。
A家主名を入れること。
B.文章は短く要点のみとし、難しい単語は使わないこと。誰でもすらすら読めるようにしてある。人間は考え込むと疑い深くなることを避ける。
C.コンピューター管理システムなどというナウイ言葉を使っている。
D自動引き落としをしている入居者をイメージして普遍性を感じさせている。全員一緒という変な連帯感。
Eお願い文書なので敬語を使用している。
F連絡先電話番号を書かない。
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出始めの手口なので未だこのような事件経験者担当者と出合ったことがないので苦労話や裏話を聞いたことはないが、恐らく次のような方法でポスティングしているのだろう。
@ロケハン。戸建アパートが狙い目。住所から不動産登記簿を調べ所有者を割り出す。家賃が低廉なものがよい。
Aパソコンで文書を作成。
B各戸のドアポストへ直接投函。チラシの山に埋もれがちな集合郵便ポストはダメ。横着せず一戸ずつ配布する。^^;
C家主の住民票を偽造又は不正取得。
Dアパート近くの金融機関へサクラを使って口座開設。（ヤミ金口座の強制解約報道で有名になっております。）カード無用扱いにして他支店で出金。
E管理委託会社がある場合はアパートの壁にインフォメーションボードが掲載されているので注意する。
サクラは一日に数回金融機関を渡り歩くからそれなりの日当を払う。高年齢男性が適役。不況の昨今、候補者選びは簡単になっている。
出金係りも同様。いつ逮捕されるかわからないから入金されたら即おろすので、日課としなければならず、これはもう詐欺師ではなく詐欺業者である。
悪徳商売であっても反復継続的に利益を上げようとするならば、やっぱり足を棒にして努力しなければならない。
もし、ぱくられなくてもほどよく稼いだら他の他府県へ移動。人間、ほどほどの利益追求が長生きの秘訣。
欲張りは欲望の奴隷となりやがて、やがて、徐々に、ゆっくりと理性を失うことにより破綻することが多い。
噂が広まると実収が上がらず、逮捕される危険度は逆に上昇する。
新手の手口という言葉があるが、詐欺はなるべく新商法が良い。被害予定者には経験による学習効果がないため無警戒な状態なので、その隙間的心を狙うのが効率的。
家主とアパート名を入れなければ話はもっと簡単になる。大量に印刷してポスティングするだけで、率は低いが無用心なものからの入金が期待できる。
仲介業者の名前は覚えていても所有者の名前をメモしていない入居者もいるので率は低いが可能性がないわけではない。
登記簿謄本で所有者を特定したりサクラを使うなど、手の込んだことをしてもせいぜい一か月分しかゲットできないのであれば、いっそのことランダムに投函した方が効率がよいかもしれないから。
昨今、バブル期にはまった大家さんがテナントに対して解約時に支払うべき入居保証金を調達することができず破産したり、その前にそれが間接的原因で金融機関から任意売却するよう迫られ、居ぬきで投資物件を譲渡するケースが増加してきた。
いわゆるオーナーチェンジというものであり、その決済立会い現場ではでは固定資産税などの公租公課、共用電気料、水道料などの負担金と果実たる日割り家賃の精算が行われる。
そのときに買主側の仲介業者から入居者へ送るのが前記の「家賃振込み先変更通知書」である。入居者に直接会って説明せず、新所有者名を記した登記後謄本を添付せず、一片の通知書だけで片付けようとする習慣が遠因かもしれない。
かような習慣は早期に改めるべきであり、関係業界の善処が望まれる。入居者たる家賃支払い者は事情を知らない第三債務者なのだから。
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